当院では、OT協会が定める作業療法士臨床実習指導施設の認定を受けており、毎年、県内外の養成校から学生の受け入れを行っております。昨今は、コロナ禍の影響で、以前ほど学生の受け入れはできておりませんが、CCS(クリニカルクラークシップ)における、いわゆる参加型の臨床実習の指導体制をとっており、一緒に患者様の評価と治療介入を、治療者目線で行えるように指導を進めていくことを目指しています。ともに臨床を過ごした経験を通して、当院のリハビリの理念や雰囲気に共感していただき、今現在、一緒に働いているスタッフも多くいます。

 

そんな中、今年の夏、7週間の臨床実習を終えた学生さんより、実習を振り返って感想文を作成してくれました。今回の実習を通して、臨床にあたるにあたって、大事な視点を共有できたんだなと思える感想だったので、一部抜粋ではありますが、ご紹介させてください。

※ なお、掲載にあたり、学生本人の了承はいただいております。

 

スムーズにピンポイントで治療を進めていく過程を見学させていただき、実際に自分も同じように行おうとすると全然スムーズにいきませんでした。どのような姿勢でどこを評価し、どこに焦点を当て治療を進めるかをその場で臨機応変に考えなければいけないので、頭が追いつかず、ひとつの動作をみることで精一杯でした。また、身体の動かし方も先生の真似するだけでも思った通りに動かせず、難しく思いました。動作分析は、正常の動作を理解していかなければどこが違うのか見つけることができません。身体を触診してもこれがなんという筋肉か、どういう作用なのかを理解していなければ意味がないということを学びました。筋肉の位置関係など覚えたつもりでしたが、実際に触っている筋がなんの筋かわからなかったので、文字だけで覚えず、画像などで想像しながら勉強を進めていく必要があると感じました。今回の実習で、今まで習ってきた授業の重要性を改めて感じました。国家試験のための勉強方法と臨床のための勉強方法は全く同じではいけないと思いました。

 

最初は座骨を感じるとか、上腕骨頭内での上肢の動かし方とか患者さんの身体の動きを感じとるということが全く分かりませんでしたが、徐々に感じられるようになり、感覚が理解できた時は嬉しかったです。

人の身体は不思議で面白いです。誘導の仕方で簡単に動いたり動かなかったり、正直だと感じました。上肢の介入で下肢が良くなるなど、治療を通して全身の繋がりを実感しました。

 

わたしは信頼される作業療法士になりたいと思っています。信頼されるというのは、対象者とコミュニケーションをとり関係を築くこと、些細な変化に気づくこと、対象者に合った作業療法を行うことなど色々ありますが、信頼されるというのは評価結果(根拠)や治療目的、治療後の変化を言語化し、対象者に分かりやすく伝えることが出来ることだとこの実習を通して思いました。実際にそういったコミュニケーションをとりながら治療介入したときの方が患者さんと通じあっているように感じることができました。また、患者さんの表情も緩み、笑顔も増えると感じました。

(※ 感想文より抜粋し、一部編集あり)

 

実習序盤は、養成校で受けている学習とのギャップを肌で感じて、思うように臨床に参加できなかった学生さんですが、実習後半になるにつれて、「わからないなりに、やってみよう」と治療に参加してくれる姿がみられるようになりました。一緒に治療している中で、患者さんの変化を感じとり、患者さんと一緒に共有できる場面もみられました。休みの日に、ハンドリングの勉強をしていると聞いたときは驚きましたが、「治療=難しい」で立ち止まらず、教科書に載っていないことでも、自分なりになにができるかと考えて行動できていることは大きな経験になっていたのではないかと指導者ながらに感じた所存です。

 

学生との出会いは、まさに一期一会だと思います。かつての自分も、実習でお世話になった患者様や指導者からいただいた言葉は今でも身に染みて覚えています。それだけ、リアルな臨床の現場を肌で感じることで得られる経験は大きく、自分自身とも向き合える貴重な機会でもあると思います。指導者として関わるようになった現在でも、学生一人一人を見極めつつ、どうすればより多くの経験を積んでもらえるかを大事にしながら一緒に臨床に向かうように心掛けております。

 

学生みなさんにお伝えしていることではありますが、また成長した姿で臨床の現場で再会できることを楽しみに、日々の臨床に励みたいと思っています。

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

上伊那生協病院 回復期リハビリテーション課

作業療法士 小林 和宏